こんにちは。いろどりゆたかです。
前回の記事では、信頼って、どうやって壊れるの?子どもたちに伝えたい「境界線」の話(パート1)について、実際にあった3つの事例から考えました。
- 仲の良かった友達に机やランドセルを勝手に見られ、信頼が崩れた長女の体験
- 同級生の家に勝手に入り込み、性的な境界線を越えた中学生の事例
- 他人との距離感がつかめず、誤解や孤立を生んでしまった男の子の話
これらに共通していたのは、「人との境界線を越えてしまった」こと。それは、信頼、関係、未来など、取り戻すのが難しい大切なものを失う行為です。
でも、「境界線」って、そもそもどこにあるのでしょう?
今回は、その「境界線」とは何かを、日常の中にある例を通して、4つの視点からわかりやすく解説していきます。

境界線とは、「これ以上は入らないで」の見えない線
私たちは無意識のうちに、自分の心や体、考えを守るための線=境界線(バウンダリー)を持っています。そしてそれは、他人にもあるものです。
この線を大切にしながら生きることで、お互いに安心し、信頼し合える関係がつくれるのです。逆に、この線を相手のことを考えずに自分勝手に越えることで、相手を傷つけ、信頼を失うことになります。信頼は積み重ねるには時間がかかりますが、崩れるのは一瞬で、同じ状態に戻すことはほぼ不可能なものです。
① 社会的境界線:ルールやマナーを守ること
たとえば、交通ルールを思い浮かべてみてください。
- 赤信号では止まる
- 横断歩道で歩行者を優先する
- 一時停止を守る
これらは、自動車や自転車、歩行者など、街を安全に利用するための交通ルールです。これも立派な「境界線」です。誰もが自然と守っているように見えますが、もし誰もルールを守らなかったら、交通事故や混乱が起きて社会は機能しなくなってしまいます。
つまり、社会的境界線とは、私たちが安心して共に生活するための「暗黙の約束」。実は、私たちはすでに毎日その境界線を守って生きているのです。
その他にも、学校のルール、公共交通機関の利用マナー、お店でのマナーなど、さまざまな場所で決められたルールやマナーを守っています。社会的境界線は一番身近にある境界線かもしれません。
② 心理的境界線:心の領域を守ること
「今は話したくない」「これ以上は聞かないでほしい」「その話題には触れないでほしい」――こうした気持ちは、誰もが一度は経験したことがあると思います。また、それを超えられた時に「言わないでよ!」「聞かないでよ!」と、怒りの感情が出たことがあるのではないでしょうか。
心理的境界線とは、自分の感情や思考の安心エリア。これを尊重されると安心しますが、踏み込まれると不安やストレス、怒りを感じるようになります。
「言ってはいけないこと」、「言ってもいいこと」、「言わない方が良いこと」を常に相手の立場に立って考えていくことが信頼関係を築いていく中でとても大切です。
最近では、この心理的な境界線を壊す「ハラスメント」も問題になっています。
- モラハラ(言葉や態度で支配し、精神的に追い詰める)
- セクハラ(不快な性的な言動)
- パワハラ(立場や力を使って精神的圧力をかける)
これらはすべて、「心の境界線を無視した行為」です。言葉や態度、空気感だけでも、相手の心を傷つけることがあることを、ぜひ覚えておいてほしいです。
※このテーマは今後、別の記事で詳しく取り上げます。
③ 物理的境界線:体や空間を守ること
人には「これ以上近づかれたくない」と感じる距離があります。それがいわゆる「パーソナルスペース」です。
たとえば――
- 顔のすぐ近くまで話しかけられる
- 背後からいきなり肩を叩かれる
- 自分の飲み物を勝手に飲まれる
- カバンやロッカーを無断で開けられる
- 鉛筆や消しゴムを無断で使われる
- 部屋や布団に勝手に入ってくる
- ノックをしない
これらはすべて、身体や空間、物の境界線を越える行為です。
パート1で話した、「長女が仲の良かった友達に机やランドセルを勝手に見られた体験」、「他人との距離感がつかめず、誤解や孤立を生んでしまった男の子の話」はこの物理的境界線を超えてしまったことで起きたものです。
自分が大切にとっておいたプリンを勝手に食べられたら怒りませんか?
突然部屋に入ってきたら嫌ではありませんか?
相手にとって不快であったり、恐怖を感じさせたりするため、人間関係のトラブルや信頼の崩壊につながりやすいのです。
④ 性的境界線:愛情にも限度がある
「付き合っているから何をしてもいい」というのは、大きな間違いです。
- 同意なしにキスやボディタッチをする
- 嫌がっているのに写真や動画を撮ろうとする
- 勝手に相手のスマホや日記を見る
これらはすべて、性的な境界線を越えた行為です。
恋人同士でも、「NO」は絶対に尊重されなければなりません。
好きだからこそ、相手の境界線を守ること。それが本当の「思いやり」と「信頼」の土台です。
境界線を越えると、何が起きるのか?
- 相手に恐怖・不快感・怒りを与える
- 信頼や人間関係が崩れる
- いじめや孤立、トラブルが発生する
- 場合によっては犯罪や処罰につながる
自分の行動が、自分自身の未来をも壊してしまう可能性があるということも、忘れてはいけません。
「社会的境界線」はある程度統一されたルールやマナーから成り立っており、誰もが同じ水準で守ることができます。しかし、それ以外の「心理的境界線」「物理的境界線」「性的境界線」は人それぞれで感じ方や距離感が違います。相手によっても変わってきます。これが難しいところです。「この人は大丈夫だけど、あの人は嫌」なんてことも現実には起こりうるものです。
大切なのは、自分と相手との「距離」をしっかり理解することです。それを認めることです。
境界線を守ること=信頼を積み重ねること
人と仲良くなるというのは、少しずつ心の距離を近づけていくこと。でもそれは、相手の線を尊重してこそできることです。
「親しき中にも礼儀あり」ということわざがありますが、まさにそれは、「親しき中にも境界線あり」ということ。
境界線を守れる人こそ、安心して一緒にいられる人なのです。
次回:どうやって“正しい境界線”を学ぶのか?
「ダメって言われたからやらない」だけでは、なかなか本当の境界線の意味は理解できません。
次回のパート3では、
- 距離感を“見える化”して体感する方法
- 気持ちや価値観をすり合わせるワーク
- 心理学的な視点からの学び方
などを通して、「境界線の学び方」を具体的に紹介していきます。
あなたが誰かを傷つけず、そしてあなた自身も傷つけられないように――どうぞ、次回もお読みください。
【ラッフィのひとこと】
境界線はね、「信頼を守るためのルールなき約束」なんだね
信頼は、この約束をお互いに大切にするところから育つんだ🌱

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