私は1年前、相談援助の仕事に就いていました。ある日、母子家庭のお母さんからこんな相談を受けたのです。
「発達障害のあるうちの子が、スマホに依存していて……ゲームをやめさせようとすると暴言や暴力をふるうんです。もう、どうしたらいいかわからなくて……」
そのお母さんの言葉には、心の底からの疲労と、誰にも頼れない孤独がにじんでいました。
この相談をきっかけに、私はそのご家庭の背景や、スマホ依存のメカニズムについて深く調べるようになりました。
そして見えてきたのは、「依存」という表面的な問題の奥にある、子どもからのSOS。
この記事では、あの時の学びをもとに、スマホ・ゲーム依存の背景とその対策について、同じように悩む保護者の方々に向けてお伝えします。
スマホやゲームにのめり込んでしまう理由
発達障害の特性「過集中」が影響している
発達障害を持つ子どもには、一つのことに強くのめり込む「過集中」という傾向があります。
ゲームや動画は、報酬やルールがわかりやすく、現実の世界よりも自分を肯定してくれる場になりやすいため、依存につながりやすいのです。
ネットリテラシーの未熟さ
文部科学省の調査によると、学校におけるネットモラル教育は年間数時間程度にとどまっており、詐欺や課金トラブルといった危険性を十分に学ぶ時間はありません。
また、何が犯罪につながるのか、何を知らなければいけないのかまで深く教える機会も少ないのが現実です。
スマホが心の避難所に
スマホやゲームが、家庭や学校での孤独を埋める“唯一の居場所”になっていることもあります。
- 親が忙しく、子どもと向き合う時間がない
- 母子・父子家庭で常に一人きり
- 学校に居場所がなく、ネットの中でだけ「認められる」
こうした背景から、スマホは「必要なつながり」を提供してくれる存在になり、ますます依存が強まってしまうのです。
親のネットリテラシー不足も大きな課題
批判的に聞こえるかもしれませんが、あえて厳しく言います。ここが重要です。
私たち親世代が中高生だった頃、携帯電話が普及し始めました。
私たち世代の親は、携帯の操作や仕組みをあまり理解しておらず、電話をかけることができればだいたい問題ない。それ以外のことは私たちが親に教えていたりしませんでしたか?
現在でも同じようなことが起きています。要は子どもの方が「知っている」ということ。親が知っている最新情報なんか、子どもからすると、いわばオワコン。子どもは常に最先端を走っており、子ども達のネットワークは高速光回線並みです。まずはそれを知ることですよね。
子どもはスマホを自由に使いこなす一方で、親はこう口にします。
「ギガ数って何?」「iphone?アンドロイド?」「うちの子何しているかわからないけど、ずっとスマホいじっているのよ」
子どもがどんなゲームにハマっているのか、何が危険なのか、何をしているのかわかっていないことが多い。しかし、そういった親に限って、子どもがトラブルに巻き込まれてはじめて「学校のせい」「子どもが悪い」と責任を外に向けてしまう傾向があります。何が悪いのかもわかっていない。
本当に必要なのは、親自身がネット社会の仕組みを理解し、子どもと一緒にリテラシーを育てていく姿勢です。
スマホ依存を防ぐために、今できること
親がまずネットを学ぶ
- アプリの仕組みや課金の仕掛けを知る
- SNSや動画コンテンツのリスクを学ぶ
- 子どもより先に「危険の兆し」を察知できるようになる
ルールは「一緒に決める」ことが大切
一方的に制限をかけるのではなく、子どもにルールを提案させることが有効です。
自分で決めたルールであれば、守る責任感も芽生えます。
スマホ依存に対してやってはいけないNG対応
NG対応 | 理由 → アドバイス |
---|---|
スマホやゲームの没収 | 子どもにとってスマホは大切な存在。 それを没収する=反発、不信感を生む。執着心の強化 →まずは対話。何にハマっているの?この子は何に興味があるの?子どもは知ってほしい。 |
感情的に怒る | 怒られただけ。「何が悪かったのか」を理解できない →冷静に、建設的に、理論立てて。 |
人格否定 | 自己肯定感を損ない、問題行動が強化される →「ダメな子」ではなく「ダメな行動」に対する指摘 |
まとめ:スマホ依存は“問題”であり、“メッセージ”でもある
これからの時代、ネットがない生活は考えられません。
だからこそ、ネットとどう付き合い、自分や子どもをどう守っていくかが重要です。
スマホ依存の背景には、「助けてほしい」「ここにいてほしい」という無言のサインが隠れていることがあります。
そのサインを見逃さず、子どもと丁寧に向き合っていくことが、依存克服への第一歩です。
スマホ依存を“治す”には、依存するまでにかかった時間以上に、寄り添う時間が必要になることもあります。
焦らず、時には専門家の力も借りながら、親も子も一緒に成長していける関係を築いていきましょう。
ラッフィのひとこと
「スマホばかり見てるキミ、本当は誰かに気づいてほしいだけなのかもね。」

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